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インボイス制度が始まると、返品、値引き、売手負担の振込手数料の処理について、これまでとは違う対応が必要になります。
また、会計処理の方法によっては、インボイスの発行や受け取りなどの事務負担が増えるおそれがあります。
留意点を確認した上で、必要があれば会計処理の変更を検討しましょう。
売手負担の振込手数料への対応に注意
(1)自社の会計処理を確認する
売上代金の決済の際、買手が振込手数料相当額を差し引いた金額を振り込むことがあります。
この場合、売手が負担することとなる振込手数料相当額は、「雑費」や「支払手数料」(以下、「雑費」)として処理するか、「売上値引き」として処理を行うことが一般的です。
インボイス制度が始まることによって、処理の方法によって売手の対応が変わります。
まずは、売手負担の振込手数料について、今後どのように会計処理するかを検討しなければなりません。
(2)3つの対応
売手負担の振込手数料については、次の3つの対応が考えられます。
①「売上値引き」として処理する場合
インボイス制度では、登録事業者は返品や値引き、割戻しなどの売上に係る対価の返還等について「返還インボイス」を発行する必要があります。
ただし、金額が税込1万円未満であれば、返還インボイスの発行が免除されます。
数百円ほどの振込手数料であれば、返還インボイスの発行が不要となるため、事務負担を軽減することができます。
なお、簡易課税制度を選択している事業者の場合、振込手数料を「売上値引き」として処理したときの納税額を一度確認してみましょう。
②「雑費」として処理する
売手負担の振込手数料を「雑費」として処理する場合は、売上をマイナス処理しないため売上集計表と帳簿上の売上が一致します。
これまでは特例措置として「3万円未満の課税仕入れ」については、一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められていたため、数百円程度の振込手数料であれば「雑費」として費用処理しても問題はありませんでした。
ただし、インボイス制度開始後は、この特例措置が廃止されます。
振込手数料について仕入税額控除の適用を受けるためには、原則として、金融機関や取引先からインボイスを受け取る必要があり、事務負担も増えることになります。
【一定規模以下の事業者には経過措置がある】
一定規模以下の事業者(注)には、税込金額1万円未満の課税仕入れ(令和11年9月30日まで)について、帳簿のみの保存で仕入税額控除を認める特例措置(少額特例)が適用されるため、当面は「雑費」として処理しても事務負担に影響はないはずです。
(注)基準期間における課税売上高が1億円以下または特定期間における課税売上高が5千万円以下の課税事業者
③「雑費」で会計処理し、消費税法上「売上値引き」処理する
売手負担の振込手数料について、会計上は「雑費」として処理し、消費税法上は売上に係る対価の返還等として「売上値引き」処理することも認められます。
この場合、会計上、振込手数料相当額について売上のマイナス処理を行うことなく、返還インボイスの発行が免除されます。
実際の返品や値引きを行うときは「返還インボイス」を発行する
売上に対して、実際に返品や値引きを行う場合には、その金額が税込1万円以上であれば返還インボイスの発行が必要です。
実際の例を挙げると、売上(請求)金額に端数が生じた場合に、請求書上、端数分を値引処理することがあります。
この場合は、値引きした端数分についての税率・消費税額などを記載した返還インボイスが必要になります
(インボイスと返還インボイスを1つの書類に記載することも可能です)。
あるいは、請求後、取引先とのやりとりで、「代金振り込み時に5万円を差し引いて振り込んでください」といった値引きなどのケースでは、値引きした5万円部分について、税率・消費税額などを記載した返還インボイスが必要になります。
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